日之影町 竹細工
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早朝、太田君と門川のコンビニで待ち合わせ、延岡の上杉さんの実家に向かう。
「太田君の沢山いる友達の中の一人です」と自己紹介をすると「にっこり」笑った。
随分前に僕の乗る車のイラストの依頼があったらしく、その話でキャッチボールをしてる間に
東京から一緒に来ている料理研究家さんと出版社の人の泊まるホテルに着いた。
ここで二手に分かれ、僕はこの客人二人を後部座席に座らせた。
まるで観光客を乗せたタクシードライバーのように、お国自慢を始める。
日南から北上し日向自慢は世界サーフィン大会、そして高千穂へと進んだ。
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今日の案内は日之影役場の地域振興課の係長だが、待ち合わせた「道の駅青雲橋」で
乗って来た役場のミニバンがパンクして、次の行動の順番に整理がつかなくっていた。
この車を正常に戻すには、およそ40分は掛かると思われる。
答えは簡単である。空いている僕の車の助手席に彼を乗せればそれで済む。
戸惑う彼を車に押し込み、アクセルを踏んだ。
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そのむかし高千穂に行く時は日之影の町を通らないと行けなかった。
日之影役場と青雲橋との高低差は約130m。そこを繋ぐ狭い九十九曲がりの坂。
都会育ちに二人のどよめきを聞きながらジェットコースターを思わせる坂を逆走した。
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日之影の竹細工が有名なのは知っていたが、現代の名工廣島一夫さんはすでに亡くなっており
もう一人の宮崎県伝統工芸士だった飯干五郎さんは、驚く事に昨日ご逝去したそうだ。
廣島さんから手ほどきを受けた藤原誠さん81歳から説明をして頂いた。
鰻を獲るポッポ罠や、初めて見たが、蟹や魚を獲る罠まで竹でこしらえてあった。
農具を始め一つ一つがていねいに織り上がっており、現代の名工の作品に感心した。
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藤原さんは郵便局を退職してから竹細工を習い始め、宮崎伝統工芸士に認定された。
匠が秘密基地と称する元高千穂高校日之影分校前にある工房に案内された。
道は車一台通る幅しかなく、鉄の階段を下りた、石垣の横に建っていた。
生竹から作品ができるまでの、すべてが手作業。気の遠くなりそうな時間を費やす。
廣島さんの事を神様のようにたたえ、自分は足元にも及ばないと目を細めた。
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これらの工芸に実際に興味を持っていたのは、上杉忠弘さん以外の3名のようだ。
アーティストは、竹よりも、谷間の集落と天空の青雲橋のアングルをいつまでも追いかけていた。
次なるは、高千穂と日之影の境に位置する甲斐陽一郎さんの「わら細工たくぼ」を訪ねる。
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