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2016年12月17日

#41『ローグ・ワン』

『スター・ウォーズ』第一作目の冒頭で描かれたデス・スターの設計図。これのおかげでデス・スターの弱点を知ることができ、何よりルークが冒険の旅にでる大きなキッカケともなっている重要アイテム。これをいかに反乱軍が入手したのかを描き、正史を補完し、そして希望とフォースを繋げるもう一つのスター・ウォーズ。

※ネタバレ前提です!

■汚れと影
紛うことなく傑作だと思う。スター・ウォーズでありながら、フォースを使える者がほぼいないので、ファンタジー要素は薄れているが、その代わりに大きく付加されたのは戦争アクションという要素だ。

敵も味方も服装が汚れていて使い古された感とそんなことに構ってられない切迫感を高めている。元々スター・ウォーズは汚れがいいと褒められたこともあるらしいのだが、今作ではそれを更に高めて、「スター・ウォーズ」ワールドの生活感だけではなく、現況におけるキャラクター達の緊張感を表現していることに大きく貢献していると思う。

また、ダース・ベイダーがマスクを装着して初登場シーンの演出の見事さよ。壁に投げかけられた影がダース・ベイダーの形になって「帝国のテーマ」が鳴った時はかなりイイ!闇の中より出でし者っていうことを映像でちゃんと伝えようとしているのは映画として素晴らしい魅せ方だ。ギャレス・エドワーズ監督を筆頭に、みんなのダース・ベイダーへの敬意と愛すらもこうゆうささやかな所から感じ取れるのです。

■死にゆく者の意思
『スター・ウォーズⅦ』の大成功には新キャラクター達がみんな魅力的というのも一つある。主人公側も悪役側も忘れがたい人間がいて、そしてスター・ウォーズの世界にちゃんと溶け込んでいる。

今回の『ローグ・ワン』でも新キャラクター達が本当に魅力的だ。主人公のジンも、キャシアンも、K2-SO、そして皆がきっと好きになるチアルートとベイズのコンビ!

残念ながら後の映画では触れられないキャラクター達ばかりで、寂しい言い方をすると歴史に名を残さなかった戦士達だ。

だからこそ熱い!

そして、振り返って考えると各々が皆、死を覚悟して行動する一瞬が描かれていることに気づく。K2-SOが死を覚悟して制御ドアをロックし、ボーディーがデータ送信のコードを繋げ、チアルートがデータを送るための主電源のスイッチを入れる。

これらはバトンのように次に繋げられ、それぞれが自分の役割を果たした後に死ぬ。やるべきことをやり、希望を繋げてこの世を去る。非常にドラマチックで涙を禁じ得ないのだが実際そうではないキャラクターもいる。これはひいきをしている目線かも知れないけれど、それはそれでより戦場のリアル感を高めていると思う。各々が果たせずに無念の中死ぬ者も戦いの地にはいる。それは恐らく意図していて、「俺がいく!」と行った直後死ぬ人物が描かれている。

そのキャラクターが成し遂げるべきことを命を懸けて成し遂げようとする崇高な行為と、意思が果たされることのなかった者を両方見せているのは、これまでのスター・ウォーズでは描けなかった戦争の側面だろうね。それを番外編という点を活かし、見事に描いた点でも『ローグワン』はスター・ウォーズの世界を大きく補完する傑作になっていると思う。

■関係と運命すらも旧三部作へ繋がる
もうラストの「ローグ・ワン」達の次々と命を落とす姿の連続と、任務をやり遂げて運命を悟ったジンとキャシアンのシーンで涙ボロボロでしたね。

そしてそれからは『スター・ウォーズ』第一作目に繋がる場面が描かれる。ダース・ベイダーがライトセーバーを作動させて登場し、その後の超カッコいい殺陣(フォースで天井に張り付け→スラッシュの流れは最高です)で言い様のない高揚感、そして最後にレイア姫が一言"Hope"と言ってこの物語は『STAR WARS Ⅳ A New Hope』へ見事へ繋げる。完璧なラストの流れだったね。

また、よくよくみると旧三部作と繋がっているのはシーンや流れだけではなく、主人公と父の運命も非常に似ている。

ジンと彼の父ゲイレンの関係と、ジンの目の前でゲイレンが死んでしまうシーンはルークとダース・ベイダーのそれと一致している。

そうそう、見逃しそうだったけど呼吸に問題があることも共通しているね。それはゲイレンのことではなく、父親代わりの存在を担ったソウ・ゲレラのことです。ダース・ベイダーも戦闘によって身体に障害を抱え、呼吸に問題を抱えた。ソウ・ゲレラも戦闘によって走れない身体になったことを示唆し、恐らく吸引機を装着しているのもそれがキッカケなのかなと推測しています。

まず、父が敵側(帝国軍)に加担していること。そして、その父が子の前で正しい行いをした後に死亡してしまうことも一緒だ。

この辺りのこともお話の作り方としてオリジナルを尊重しているし、主たるキャラクターの辿る運命がスター・ウォーズの世界らしいところもこの『ローグワン』がしっかりとスター・ウォーズの魅力を内在しながら力強い作品になった一つの軸だとも思う。

■最後の一言
番外編という言葉はどこか"違うもの"だよって意味を内在している言葉だ。宣伝でも「もう一つのスター・ウォーズ」とうたっている。

その為かそんなに高い期待値を持って観に行った人は少ないと思う。けれどこれは良い意味での違う何かであり、もう一つのスター・ウォーズだ。

正史のようなキャラクター達ができない、戦争下で命を投げ出してでも希望を未来へ繋げるという行為をしっかりと描き、そしてデス・スターの脅威やベイダー卿の恐ろしさすらも強固にする力を纏わせ、結果オリジナル三部作に繋げるだけでなく、観客の想像力に翼を授けてくれるような作品になったと思う。

はたしてこれから先、『スター・ウォーズ』の前文、

反乱軍のスパイは帝国軍の究極兵器の設計図を奪取することに成功する」

を読んで、この映画を、ローグワンの者達を思い出して、涙腺が緩まずにいられようか。

フォースと共にあらん事を。

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