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2015年12月27日

#16『キングスマン』



『キックアス』にて美少女クロエちゃんに卑猥なワードと言わせまくり、かつグロいのにホップな楽しいアクション映画を作る、どうかしている監督さんのどうかしている最新作『キングスマン』

表向きはカッコいいスーツを売る老舗服飾店、だが裏では世界を股にかけて人民の幸福のために闘うスパイ。その欠員補充のオーディションにひょんなことから参加することになっちゃって…というお話。

『キックアス』が平凡な男の子をスーパーヒーローに育て上げる、正義の味方版『マイ・フェア・レディ』だとしたら、この映画はそれの007バージョンだ。

9割方の人間がヘッドショットで絶命しまくる超キレッキレのアクションシーンの数々に酔いしれ、イギリス特有のドスグロいブラックジョークに備えろ!そして王室や貴族に中指を立てて発射するギャグや下ネタはさすがロックンロールの国だなと思いましたね。ありとあらゆる所に喧嘩売ってるような内容は正に"英画"って感じです。

古き良きスパイ映画やドラマにラブレターを書いたような作品だよ!とか監督はおっしゃっておられますが、こんなラブレターヤバすぎるだろ!まぁ、最高でしたよ。ラブレターの目的がハートに火をつけることだとしたら、それは見事に全うしてるよ。

そしてこの映画の正義の味方が着るスーツはなんだと思います?なんとスーツなんすよ!これが堪らないね。

とまぁ、表面上はカッコいいアクションにブラックジョーク&下ネタギ、そしてほんの少しのエロとグロっていうそれだけでレディースエンドジェルトルメンが楽しめる最高に最低な映画なんだけどその根底にはとてもいいメッセージが込められている。

それは「人は生まれではない」ということだ。

表の顔はスーツの仕立て屋で、裏ではスパイという男ハリーが、友人の子供エグジー君を一人前のナイトに仕立て上げようとする。

「俺は育ちが悪いからよ、貴族やボンボンには敵わねぇんだよ」とボヤくエグジー君にハリーは「人は生まれではない」と言う。ここは階級社会のイギリスへのアンチテーゼとも取れる反抗の精神を見事にギュッと濃縮した素敵なシーンだ。

自分を仕立てろ!テメェがテメェを作るんだ!このメッセージを上品に、かつ下品に描く。人は何者かになれるチャンスを自分の中に持っていて、それを信じて努力することへの賛美にもなっている。そのあたり、単なるクレイジーな映画じゃないぜ。

ちなみに、マイケル・ケイン演ずるアーサーがエグジーに"You dirty little fucking prick"という時、アクセントが労働階級のもの(コックニー)になっている。つまり、実は彼もまた生まれが上流階級ではないことがほのめかされているのだ。

次回は、2015年のベスト3と総評を年内に発表します。

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