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2016年01月24日

#19『ザ・ウォーク』


これまでの歴史上、そして未来永劫たった一人しか達成しえないショー「ワールドトレードセンターを綱渡りする」。史上最も芸術的な犯罪と讃えられているこのショーをやり遂げた、曲芸師フィリップ・プティの実話を映画化。映画館を417メートルの高さまで持って行き、高所恐怖症の人は甘く見てたら失神orリバースするのではないかというぐらいの大迫力だ。

これまでの映画では味わえない恐怖とスリルがある…と書くとありきたりな文句だけど目眩がしたり、手が汗でびっちょりするものは中々ないぜ。

空を飛んでいるような感覚や、宇宙空間での浮遊感はこれまであったけど、これほどまで空を歩いているような疑似体験を体感させる作品はなかった。同じ出来事を描いた『マン・オン・ワイヤー』というドキュメンタリー映画では写真と証言と再現VTRで観客の想像力をワイヤーの上に乗せてくれたが、今回はありったけの映像技術で空のお散歩を体験だ。過去に『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や『フォレスト・ガンプ』で特殊効果を使った映像だったら世界トップクラスの監督ロバート・ゼメキスがその能力を遺憾なく発揮し、そしてそのビジョン作りに貢献したスタッフたちの技術は素晴らしい。

役者陣もよく、まぁなんといってもフィリップを演じたジョセフ・ゴードン=レヴィットの狂気を内在した演技や画面全体の緊張の糸を張り詰めさせる表情の作り方はお見事!「僕はワイヤーウォーカーだ」と称するフィリップと共にスカイウォーカーになろう!

常人ではわけがわからない彼がつなわたりをする理由や動機もトチ狂っていて、純粋で、真っ直ぐで、美しい。だからこそあの一筋の線を彼は歩き、そして不可能の線を超えたのかもね。

映像の迫力だけでなく、ドラマ自体も一歩間違えればおじゃんになる正につなわたりの連続のようなサスペンスやテンポのいいストーリーも観客をこのショーから目を離させない。

永遠に見ることのできない景色と、不可能の先にある目の眩むような芸術を体験したいなら今しかないぜ。フィリップ・プティさんの綱渡りみたいに、二度と大きい画面の3Dでこの作品を観ることができなくなるその前に。空を歩きに映画館へどうぞ。


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