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2015年10月16日

#5 『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』

■これまでになかった続編とその未来



 



※今回の紹介はこの『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズをすでに観賞された方用に書いています。ご了承ください。



 



遥か昔でも遥か未来でもなく、一世代前にタイムスリップするというタイムトラベル物の盲点を突き、気が遠くなるほど念密に考えられた脚本。そして一生忘れることのないであろうユーモラスなキャラクターたちの時間を超えた大冒険を描いて、大ヒットを飛ばした『バック・トゥ・ザ・フューチャー』。



 



当然、スタジオは続編を作れ!と監督ロバート・ゼメキスに頼み込む。テレビにて上映した際に冗談でラストシーンに”To be Continued”と書いたためにファンも大興奮。しかしゼメキス監督は全然乗り気ではなく、続編を作る気はないとスタジオの重役に言う。しかし、返ってきた答えは意外なものだった。



 



「ならいいよ、こっちで勝手に作るから」



 



それを聞いたロバート・ゼメキスは他の誰かに委ねるくらいならッ…ということで続編のメガホンを撮ることを決めた。



 



これまでになかった続編の誕生の瞬間だ。



 



当初は、PART1の過去の舞台であった1955年から少し先の60年代を舞台にし、マーティーの両親がヒッピーになっている設定を想定していたが、それはあまりにも第一作目を似ているということで取りやめた。そして、史上最高にクレイジーなアイデアをひらめいた。



 



“同じ時代に戻って違う視点から物語を描いてみたら?



 



タイムトラベルをこれまでになくうまく使った素晴らしい設定だった。



 



過去に小説では『ドン・キホーテ』が後編では『ドン・キホーテ』の小説が出版され、ドン・キホーテとその従者サンチョが有名になっている、という設定が用いられていた。小説と続編という要素を上手くミックスした非常にクリエイティブかつどうかしているアイデアだった。これはメタフィクションの手法だと云われているが、それに近いアイデアを映画でやったのが『バック・ドゥ・ザ・フューチャー PART2』だ。これは全くメタフィクションではないけれど、客観的に自分達の行動をみる状況に置かれる点では一緒だ。



 



さて、ここからは恐らく観た人も気づかなかった点について述べていこう。



 



1955年のシーンにてビフが「魅惑の深海パーティー」の飲み物にお酒を入れるいたずらをしているというシーンがある。これが示唆していることがお分かりだろうか。



 



PART1にてマーティーの父親:ジョージが約束の時間までパーティー会場で一人待っている時に飲み物を飲んでいるのだが、それはもしかしたらビフのお酒が入っていたのかもしれない。そしてマーティーは両親をくっつけるという作戦が成功したときにドクにこういう。



 



「パパがまるで別人みたいだったよ!」



 



もしかしたら、慣れないお酒を飲んで酔っ払っていたからかもしれないからね。



 



他にもネタはたくさんある。実はイライジャ・ウッドが未来のゲーセンのガキンチョとして出演していることや、マーティーが一度もデロリアンを運転していないことや、1955年でドクが壊した時計台のふちがまだ壊れていることなどなど…



 



しかしきりがないので最後はこの映画が描いた未来についてお話して締めよう。



 



ロバート・ゼメキス監督がこの映画を撮ることを嫌がっていた理由は、未来を描くことにためらいがあったからだ。想像によって作られた未来予想は間違っていることが多いからだ。



 



しかし、最終的に彼は非常にクリエイティブに溢れた未来を描いた。空飛ぶ車、アンチエイジング、自動的にサイズが合う服と靴、超正確な天気予報、そしてホバーボード。それらのほとんどは2015年の現在、未だ実現されていない。



 



そして、この映画の未来の舞台は20151021日だ。



 



もうまもなく、描かれた未来の日がやってくる。



 



確かにこの映画の描いた未来は間違っていたかもしれない。『ジョーズ19』は作られていないし、空飛ぶ車はまだまだ先の話になるだろう。



 



しかし、この映画によって様々な人の未来が変わった。この映画のおかげで科学の道に興味を持った者もいるし、物理学に進んだ者もきっといる。いや、映画の魅力に取り憑かれた人だってきっといる。少なくとも一人は知っている。



 



『バック・ドゥ・ザ・フューチャー PART2』は未来と過去を描き、映画の最後には次回作であるPART3の予告編を本編の中に入れる、というかなり斬新で、今なお非常に珍しいサプライズを盛り込んだ。そしてドクが着ているシャツの模様はカウボーイが列車を追っている絵がプリントされている。つまり、PART3で行われる出来事の伏線だ。つまり、この映画は本当にこれからのことをたくさん描いたイマジネーション溢れる奇跡の一本。



 



もうすぐ、マーティーとドクがやってくる。そして、もしファンが彼らに会ったとしたらこう言うんじゃないのかな。



 



「やぁ、マーティーにドク。2015年にはデロリアンは空も飛ばないし、ホバーボードも実はないんだ。でもね、世界中のたくさんの人々が君らのことを知っているし、そして今なお愛しているよ。そしてこれから先の未来でもね」



 次回は、アメリカのアカペラサークルで繰り広げられる抱腹絶倒ガールズコメディー

『ピッチ・パーフェクト』について10/24に紹介予定


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